「バイク乗りとして、一度は2ストに乗ってみたい」
その願いを叶えてくれたのが、ヤマハ DT125(17F)でした。所有期間は数か月、走行距離は約1,000km。最後は故障によって手放すことになりましたが、今でもあのエンジンの感覚は忘れられません。
6,000rpm付近から、バンッと背中を押されるように加速する。回転数を落とさないようにギアを選ぶ。走り終わると、自分の背中まで2ストオイル臭くなっている。
それまで4ストロークばかり乗ってきた僕には、何もかも新鮮でした。
今回はDT125(17F)の所有レビューとして、購入した理由から初めての2ストの乗り味、相次いだオイル漏れ、そしてCDI故障による返品までを振り返ります。トラブルも含めて、「あのバイクに乗れてよかった」と思っている話です。

- DT125を選んだ理由|憧れていたのは「2スト」というエンジンだった
- グーバイクで見つけたDT125(17F)を、乗り出し約34万円で購入
- 初めての2スト|6,000rpmを超えると「バンッ」と加速する
- 松本から下道で帰宅|市街地の水温にひやり、その先の道は最高だった
- 2ストの音と白煙、背中まで残るオイルの匂い
- DT125のオイル漏れ|一つ直すと、また別の場所から漏れる
- 松本の購入店へ修理を依頼|最後まで親身に対応してもらった
- 最後はCDI故障。部品が見つからず、返品することになった
- 34万円で購入し、30万円で返品。差額4万円は「思い出を買った」
- DT125との経験は、今のKLX230シェルパにつながっている
DT125を選んだ理由|憧れていたのは「2スト」というエンジンだった
これまでNinja 400、KLX250、ZX-14R、SV650Xなど、排気量もジャンルも違うバイクに乗ってきました。現在手元にあるのは、BMW R1200GS、KLX230シェルパ、スーパーカブ90です。
ただ、DT125に出会うまで、所有してきたバイクは基本的にすべて4ストロークでした。
特定の2スト車に昔から憧れていた、というわけではありません。憧れのバイクというより、憧れのエンジン形式が2ストだった。一度は自分で所有して、その違いを味わってみたかったんです。
SV650Xに乗っていると、脇道の先が気になった
DT125を探し始めた頃は、SV650Xを所有していました。カフェレーサースタイルが好きで買ったバイクですが、ツーリング中に道路から伸びている林道や細い道を見ると、どうしても気になります。
「この道、この先どうなってるんだろう」
SV650XやZX-14Rでは、思いついたまま気軽に入っていくのをためらいます。以前KLX250に乗っていたこともあり、またオフロードバイクが欲しくなってきました。
そこで、「どうせ買うなら、今まで乗ったことのない2ストにしよう」と考えました。探していたのはKDX125やDT125など、125ccクラスの2ストオフロード車です。
グーバイクで見つけたDT125(17F)を、乗り出し約34万円で購入
探してみると、古い2ストの中古車は思っていた以上に高く感じました。ヤフオクなども見ましたが、個人売買には少し抵抗がありました。
スーパーカブ90などを購入した経験から、古いバイクは買ってすぐ普通に乗れるとは限らない、と感じていたからです。購入後の修理や整備まで含めて考える必要があると思っていました。
そんな中、グーバイクで、長野県松本市にある個人経営のバイクショップが販売していたDT125(17F)を見つけました。乗り出し価格は約34万円です。
走行距離については「改ざん車扱い」と説明されていたため、メーターの表示を実走行距離として当てにできる車両ではありませんでした。それでも、写真や説明を見て「これだ」と思いました。
まず電話で在庫を確認し、購入手続きと登録が終われば、引き取りに行ってそのまま乗って帰れることも確認。後日、松本まで現車を見に行きました。
約40年前のDT125。古さも含めて付き合うつもりだった
実車を見ると、全体には年代相応の古さがありました。一方で、足回りなどは比較的きれいだったことを覚えています。
DT125は長い歴史のある車名ですが、今回の車両は17Fです。水冷化された1982年のDT125について、ヤマハの公式資料には次の諸元が掲載されています。僕が乗っていた頃には、登場から約40年が経っていた世代のバイクです。
| 項目 | 1982年DT125の公式資料に記載された内容 |
|---|---|
| エンジン | 水冷・2ストローク・単気筒 |
| 排気量 | 123cm³(125ccクラス) |
| 最高出力 | 12kW(16PS)/7,000rpm |
| 車両重量 | 108kg |
出典:ヤマハ発動機「1982年 DT125」。上記は1982年モデルの参考諸元で、僕の車両の製造年や現状の性能を示すものではありません。
現車確認では、店主から気になる説明もありました。キャブレターのフロート関係に問題があるらしく、停車中に燃料コックをONのままにしておくと、5分もしないうちにガソリンがあふれてくるとのこと。
「停車するときは、必ず燃料コックをOFFにしてください」
そう言われ、当時の僕は「こういうところも旧車と付き合うということなのかな」と受け止めました。ただ、今振り返れば、燃料漏れは古いバイクだから正常というものではなく、修理が必要な不具合です。
自分でも少しずつ整備しながら乗るつもりだったこと、店舗でも納車前に最低限の整備をしてもらえることから、購入を決めました。
初めての2スト|6,000rpmを超えると「バンッ」と加速する
登録などが終わってから、再び松本へ。現金で代金を支払い、そのままDT125に乗って帰ることになりました。
走り出して、まず思ったのは「これが2ストロークか」ということ。それまで乗ってきた4ストとは、明らかにエンジンの性格が違いました。
僕が乗っていたDT125は、体感で6,000rpm付近から突然パワーが出てくるように感じました。
そこまでの回転域では、正直かなり遅く感じます。低回転のトルク感が薄く、「これならスーパーカブ90のほうが速いんじゃないか?」と思うくらいでした。
ところが、6,000rpmを超えると「バンッ!」と背中を押されるような加速が始まります。
もちろん、絶対的な加速力だけを見れば125ccです。大排気量車をしのぐ、という話ではありません。ただ、それまでのおとなしい加速から急に力が出るので、落差がものすごく大きい。
よく聞く「2ストのドッカン加速」には、この低回転との落差によって、余計に強く感じる部分もあるのではないか。乗ってみて、そんなふうにも思いました。
それを差し引いても、パワーバンドに入ったときの感覚は病みつきになるものでした。

おいしい回転域を維持するのが、難しくて面白い
僕がそれまで乗ってきた4ストは、比較的幅広い回転域から自然に力を出してくれました。対して、このDT125で気持ちよく加速するには、力が出る回転域を意識する必要がありました。
例えば上り坂。6,000rpm以上で走っていても、坂が続いて回転数が落ち、パワーバンドを外れると一気に力がなくなるように感じます。そこで一段ギアを下げて、回転数を戻してやる。
カーブでも同じです。手前で減速して回転数が下がったら、出口で加速できるギアを選んでおく。アクセルを開けるだけでなく、エンジンの調子にこちらが合わせていく感覚でした。
「どうやって6,000rpm以上を維持するか」。気持ちよく走ろうとすると、そんなことを考えながら操作していました。
扱いやすさでは、それまでの4ストに分があると思います。でも、このDT125には操作がうまくつながったときの面白さがありました。難しいけれど、それが楽しいんです。
仕組みを少し補足すると、エンジンの力の出方には、吸排気の圧力の波と回転数の関係も影響します。排気管内の圧力変化を利用する効果は、2ストの性能を考えるうえでも大切な要素です。[日本機械学会「排気管効果」]
ただし「2ストは必ず6,000rpmで急に加速する」という意味ではありません。ここで書いている回転数やカブとの比較は、当時の僕の車両に乗った体感です。
松本から下道で帰宅|市街地の水温にひやり、その先の道は最高だった
納車日は、松本から安曇野、白馬、糸魚川方面を通って帰りました。125ccなので高速道路を使うルートは選ばず、すべて下道です。
最初に気になったのは、松本市街を走っているときでした。その日はかなり暑く、交通量も多くて渋滞気味。水温計の針が、どんどん上がっていきます。
僕の車両にはラジエーターファンがなく、なかなか進まない状況で水温が上がるのを見ていると落ち着きません。
「これはちょっと怖いな」
途中で一度休憩し、エンジンを冷ましました。実際にどこまで水温が上がっていたかを測ったわけではありませんが、納車直後から旧車らしい緊張感がありました。
ところが、市街地を抜けると気分は一変しました。安曇野から白馬、そして糸魚川方面へと走っていく道は最高でした。
初めての2ストの反応を確かめながら、道に合わせてギアを選んで走る。ずっと気になっていたエンジンに、今、自分で乗っている。そのことがうれしかったんだと思います。

2ストの音と白煙、背中まで残るオイルの匂い
DT125の音は、かなり大きく感じました。
「心地よいサウンドだった」ときれいに書くより、普通にうるさいというほうが、僕の感覚に近いです。それでも不思議と、音で特別疲れたとは感じませんでした。初めての2ストということもあり、騒がしさまで楽しんでいたのだと思います。
アクセルを戻したときに聞こえた「パンパン」という音も印象に残っています。何が原因で鳴っていたかまでは分かりませんが、僕にとってはDT125の記憶と結び付いた音です。
そして、白っぽい排気とオイルの匂い。2ストでは、潤滑に使うオイルも燃焼に伴って消費されます。排気の白煙にも、そのオイルが関係しています。[ヤマハ発動機の2ストローク解説]
走っていると排気が回り込むのか、自分の背中まで2ストオイル臭くなりました。
これも「ものすごくいい匂い」とまでは思いません。普通にオイル臭いです。ただ、実際に乗ると「あの匂いが好き」という人の気持ちも、何となく分かる気がしました。
音だけでも、加速だけでもない。煙や匂いまで含めて、それまでの4ストとは違うバイクに乗っている実感がありました。

DT125のオイル漏れ|一つ直すと、また別の場所から漏れる
購入後の200〜300kmほどは、2ストの走りに慣れること自体が楽しい時間でした。ただ、小さな違和感もありました。
4速から5速へ上げる際、たまにうまく入らないことがあり、回転数を上げているとすんなり入ることもありました。アクセルも、徐々に開ければついてくるのに、一気にガバッと開けるともたつく。どちらも、その時点では原因が分かりませんでした。
そして、200〜300kmほど乗った頃。バイクを停めていた場所の地面が濡れていることに気づきました。のぞき込むと、アンダーガードにオイルがたまっています。
漏れていたのは、シフトペダル付近のシフトシャフトのオイルシールでした。
シフトシャフトのオイルシールは、自分で交換できた
単なるにじみではなく、「ポタ、ポタ、ポタ……」と落ちてきます。
冷えているときはそれほどでもないのですが、走ってエンジンとオイルが温まると、停車後に漏れ始める。100kmほど走った後には、感覚では20〜30ccくらい漏れたのでは、と思うこともありました。量を正確に測ったわけではありませんが、放っておける状態ではありません。
「自分で直してみよう」
インターネットで交換方法を調べながら、慎重に作業しました。古いシールを外す際、シャフト本体を傷つけてしまうと厄介です。そこは特に気を使いました。
結果はうまくいき、交換後、この部分からの漏れは止まりました。初めての作業だったので、「ちゃんと直せた」という達成感もありました。

オイルポンプ、クランクシャフト側、キック側と続く
ところが、一つ直したと思ったら、今度はオイルポンプ周辺からにじみ始めました。シフトシャフトほどではありませんが、やはり気になります。ここも自分で修理しました。
次はエンジン左側のクランクシャフト付近のオイルシール。さらに、キックペダル側のシールからも漏れがありました。
「一つ直したら、また違うところから漏れる。これが旧車なのか」
そんな気分でした。古いバイクならすべてこうなる、という話ではありませんが、僕のDT125では修理が続きました。
クランクシャフト側も自分で交換しようとしたものの、分解途中の固い締結部分がどうしても外せません。約1週間、自分で格闘しました。
これ以上無理をして、ねじを傷めたり別の故障を増やしたりしては困る。そこで、「ここから先はプロに任せよう」と判断しました。
松本の購入店へ修理を依頼|最後まで親身に対応してもらった
購入したショップへ電話し、オイル漏れと、自分では外せない部分があることを相談しました。
店主は快く引き受けてくれました。ただ、車両を持ち込む必要があったため、再びDT125で松本へ向かい、店に預けることにしました。
帰りは鉄道です。店主が松本駅まで車で送ってくれて、そこから電車や特急を乗り継いで長野方面へ移動し、新幹線で帰宅しました。駅まで送ってくれたことも含め、親切に対応してもらったのを覚えています。
修理の目安は「1週間くらい」。自分で交換するつもりで買っていた予備のオイルシールも渡し、交換をお願いしました。
新品のオイルシールが、なぜかはまらない
ところが、1週間経っても連絡がありません。10日ほど経ったところで電話すると、「オイルシールがうまくはまらない」とのことでした。
キックペダル側は交換できていましたが、左側クランクシャフトのシールで作業が止まっている。別のシールを取り寄せているため、もう1週間ほどかかるという説明でした。
預けて2週間ほど経った頃、再び電話しましたが、やはりうまく入らないとのこと。新品が続けて合わないのはおかしい、という話になりました。
そこで、販売店から聞いたのがパーツリストの部品番号の違いです。
古い紙のパーツリストと、ヤマハがWebで公開しているパーツリストでは、該当するオイルシールの番号が異なっていた。店側からヤマハへ問い合わせ、正しい部品番号が分かった――という説明を受けました。
店主も困っていて、僕も「そんなことがあるの?」と思いました。
ただし、僕自身が新旧両方の資料を照合できているわけではありません。番号の違いや、その理由については販売店から受けた説明であり、メーカーの誤記だったと確認できた話ではありません。
シール交換後は、キャブレターも調整することに
ようやく合うシールを装着でき、「これでまた乗れる」と思ったのですが、次はキャブレターの調整が必要になりました。
販売店からは、古いシールで気密が落ちた状態に合わせたセッティングになっていた可能性があり、新品に交換した後の状態に合わせて調整している、と説明されました。
2ストのクランクシャフトのオイルシールは、クランクケース内の気密を保つ役割も担っています。その不良がエンジンの調子に関わることは、実際の修理事例でも説明されています。[ホット&クールのクランクオイルシール修理解説]
そのため、シール交換後にエンジンの状態や燃調を確認する話として受け止めました。ただ、どの調整がどれだけ必要だったかまでは分かりません。購入後に感じていたアクセルのもたつきも、これが原因だったとは断定できません。
店主は、「できるだけ完璧な状態にしてから返したい」と言ってくれました。時間はかかっていましたが、そこまで取り組んでくれることをありがたく感じていました。

最後はCDI故障。部品が見つからず、返品することになった
「もうすぐ直るかな」と待っていたある日、販売店から電話がありました。
「CDIがダメになりました」
CDIは、コンデンサーに蓄えた電気を放電し、点火コイルを通じてスパークプラグに火花を飛ばす点火方式です。ここで故障したと説明されたのは、その点火装置のユニットでした。[ヤマハ発動機のCDI解説]
問題は、代わりの部品が見つからなかったことです。販売店の説明では、その時点で新品やリビルト品を手配できず、中古部品も見つからないとのことでした。
そして、「これ以上修理を進めることができないので、返品という形にさせてください」と申し出がありました。
こうして、僕のDT125との付き合いは数か月、約1,000kmで終わることになりました。
走った時間より修理の話が多くなってしまうくらい、トラブルはありました。それでも、販売店への不満という気持ちはありません。
何度も試運転をしながら原因を探し、できるだけ良い状態にしようとしてくれていたと聞いています。僕にはその対応がありがたく、むしろ「ここまでやってもらって申し訳ないな」という気持ちのほうが強く残っています。
34万円で購入し、30万円で返品。差額4万円は「思い出を買った」
返品の具体的な形は、販売店による買い取りでした。
乗り出し約34万円で購入した車両を、30万円で買い取る形にできないか、と提案されました。僕としては、ここまで修理に取り組んでもらったので、それで大丈夫ですと受け入れました。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 購入時の乗り出し価格 | 約34万円 |
| 返品時の買い取り額 | 30万円 |
| 差額 | 約4万円 |
この4万円は、購入額と買い取り額の差です。燃料代や部品代、移動にかかった費用まで含めた所有コストの総額ではありません。
それでも僕の中では、「数か月DT125を所有して、約1,000km走って、初めて2ストを経験できた。その思い出を4万円で買った」と思っています。
もちろん、もっと長く乗りたかったです。オイル漏れが落ち着いた状態で、また走りに行きたいとも思っていました。
ただ、あの加速や操作する面白さは、乗らなければ分からなかったものです。短い期間でも、自分で経験できたことには意味がありました。
DT125との経験は、今のKLX230シェルパにつながっている
DT125を手放すと、手元からオフロードバイクがなくなりました。そこで次の一台として、KLX230やCRF250系を探し始めました。
そんなときに知ったのが、KLX230シェルパです。「これだ」と思い、レッドバロンへ実車を見に行って購入しました。これが、現在所有しているシェルパにつながっています。
今は、オフロードバイクとの付き合い方も少し変わりました。
以前のKLX250では、きれいに保とうとしすぎて、林道へ行けば汚れることを気にしていました。大切にするあまり、本来やりたかったことから遠ざかっていたんです。
今のシェルパでは、傷を気にしすぎないようにしています。相棒ではあるけれど、同時に、自分の人生を楽しむための道具として使う。林道やダートを走って、自分が経験できることを増やしたいと思っています。
整備をおろそかにするという意味ではありません。きれいに保管することだけを目的にせず、そのバイクでやりたかったことを楽しむ。DT125との経験も、そんな今の考え方につながっています。

DT125は、安心して乗り続けられる一台ではありませんでした。オイル漏れを直しては、また別の場所を直す。最後は点火部品が見つからず、お別れになりました。
それでも、6,000rpm付近から急に力が出てくる感覚も、おいしい回転域を探してギアを選ぶ面白さも、今でもはっきり覚えています。
うるさい排気音。白い煙。走り終わった後に背中に残るオイルの匂い。
4万円で買った、初めての2ストの思い出。短い付き合いだったけれど、DT125に乗れてよかったです。


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